【2022/05/04】「稼げる大学法案の廃案を求める大学横断ネットワーク」最新情報

【2022/05/04】「稼げる大学法案の廃案を求める大学横断ネットワーク」最新情報

以下、同ネットワークからの最新情報をお送りします。

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4月28日に衆議院で可決してしまいましたが、参議院での審議が始まる連休明けまでに反対の声を高めれば、廃案に持ち込める可能性はまだあります!

そこで、この問題を初めて知る方にもわかりやすくするために、Change.org署名のタイトルと呼びかけ文を改訂しました。是非、改めて署名を広めて下さい!

https://www.change.org/kasegerudaigakuNO

さて、今日は憲法記念日です。昨日、発売された『ZAITEN』6月号(特集「大学と企業とカネ」)で、呼びかけ人の一人である指宿昭一弁護士はこの法案は憲法違反だとしてこう述べています。

「法案の中では大学の自治について全く顧みられていません。憲法23条で学問の自由は保障されているはずで、学問の自由の保障は大学の自治を含む概念だと最高裁の判例にも出ています。いつ日本は憲法を改正したのでしょうか。法案に大きな危険を感じます。」(「稼げる大学」法案は政財界による大学支配【特集】大学10兆円ファンドを主導する「学者政商」の正体」)

一方、今日(憲法記念日!)の日経新聞には、内閣府総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)議員の上山隆大氏のインタビューが掲載されました(「10兆円ファンド始動へ 大学を知識社会のエンジンに」)。CSTIは、この法案の「産みの親」でもあり、今後、国際卓越研究大学の選定方針や認定そのものにも大きな影響を及ぼす組織です。上山氏はその有識者議員で、唯一の常勤議員です。

その上山氏が、大学にとって大切なオートノミー(自律性)は保たれるのかとの記者の問いに対し、次のような驚くべき回答をしています。

「(略)運営費交付金は維持しながらも資金源を多様にし、何をするかを自ら決めるのが本来の自律性だ。運営費交付金の比重が下がった方が学問的な自由度も高まる

「(略)大学の自治や学問の自由を維持するためにも、外部の資金提供者と緊張感のある関係を持って経営していくべきだ

「資金源を多様に」という言葉は、企業からの寄付金などを集める一方で、発明・発見などの特許化を進めて企業による製品化に貢献することを指すと考えられます。こうした試みを推進しようとすること自体、まさに指宿弁護士が言うとおり「いつ日本は憲法を改正したのか」と問いたくなるような「学問の自由」「大学の自治」の破壊です。

さらに、国立大は法人化後に政策誘導が効き過ぎて他律的になっているようにも見えるとの問いの延長上で、国際卓越研究大学に認定されると最高意志決定機関として新たに「合議体」の設置が求められることについて、次のように述べています。

「合議体の設置は多様なステークホルダーの意見を経営に持ち込む方法だ。学長の選考にも意見を言うだろう。学長選挙のたびに部局が票の争いをする大学の政治化よりずっと健全だ。大学の自治の観点でいえば、合議体のメンバーに誰を選ぶかは学内の評議員も参加したチェックが入る」

「多様なステークホルダー」といいながら、そこに見えているのは「外部の資金提供者」をはじめとする経済界、そして政界の意向が大学の経営に直接貫徹される未来だけです。学生、教職員、地域社会の住民のことは無視されています。そもそも上山氏のような人物が内閣の威光を笠に着ながら大学の意思決定を変えさせることそれ自体が、「大学の政治化」を進めるものであるにもかかわらず、あたかも自分たちは「政治」に無縁であるかのような論はたちの悪い詭弁です。

上山氏はまた「ファンドで選ばれる大学は学部の規模を小さくして大学院の活動に特化し、学部教育をトップ研究大学以外の大学に譲るべきだ」とも語っていますが、学部の教育と大学院での研究を簡単に切り離せるかのような論は、教育と研究が一体となった今日の大学の在り方を根底から否定するものです。

日本学術会議任命拒否問題が起きた際、憲法23条の学問の自由を損ねるものであるとして、撤回を求める大きな声が上がりましたが、上山氏はCSTIで行われた「日本学術会議の在り方に関する政策討議」の筆頭構成員として、「任命問題は議論の対象としない」ことによって日本学術会議への政治的介入を実質的に是認しています。

 憲法23条学問の自由を壊す、こんな危険な法案は絶対に廃案にしましょう!

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稼げる大学法案の廃案を求める大学横断ネットワーク

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2022年5月3日火曜日 10:52:30 UTC+9 鬼界彰夫@筑波大学名誉教授:

河さま

 

重要な情報ありがとうございます。

 

鬼界(筑波大学名誉教授)です。

 

上山氏の発言で、特に二番目の学問の自由と大学の自治に関する発言が欺瞞的であり、彼の立場をカモフラージュしているように思います。一見学問の自由の価値を認めているような発言ですが、その背後には学問の自由は私財を投じた学術活動にのみある、という憲法23条を否定するような新自由主義的学術観があります。

彼のこうした立場は、松本美奈氏とのインタビュー「異見交論」での「運営費交付金で賄われた上で、自治や自由を語るのは間違っている」という発言にも現れています。

更に学問の自由に関しては、同氏が筆頭となっている「日本学術会議の在り方に関する政策討議取りまとめ」(CSTI有識者議員懇談会、令和与年1月21日)日本学術会議の在り方に関する政策討議取りまとめ (cao.go.jp)において「政策討議は日本学術会議の在り方に関する討議を行うものであることから、日本学術会議の任命問題は討議の対象としない」(p.2)と述べることにより菅政権による学術会議への政治的介入を実質的に是認しています。

日経のインタビューにおいて一見学問の自由を尊重するかのようなそぶりを見せてはいるものの、実質的にそれに根本的に敵対するという同氏のスタンスは一貫しています。批判の高まりを感じ、「学問の自由、大学の自治」へのリップサービスをしているのかもしれません。要警戒です。

 

我々としては、国際卓越研究大学制度に参加することは、こうした考えを持つ人物の実質的統制下に入ることであるということを、制度への参加を考えているすべての大学のリーダー、構成員に広く知らせることが決定的に重要かと思います。

 

rom: universit…@googlegroups.com [mailto:universit…@googlegroups.com] On Behalf Of Kaoru KAWA
Sent: Tuesday, May 3, 2022 9:37 AM
To: universit…@googlegroups.com
Subject: [university_autonomyt:389] 日経の上山隆大氏インタビュー記事

 

河です。

 

10兆円ファンド始動へ 大学を知識社会のエンジンに(日本経済新聞、2022年5月3日)

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO60485040S2A500C2CK8000

 

CSTI常勤議員の上山氏へのインタビューです。

 

「運営費交付金の比重が下がった方が学問的な自由度も高まる」

「大学の自治や学問の自由を維持するためにも、外部の資金提供者と緊張感のある関係を持って経営していくべきだ」

「合議体の設置は多様なステークホルダーの意見を経営に持ち込む方法だ。学長の選考にも意見を言うだろう。学長選挙のたびに部局が票の争いをする大学の政治化よりずっと健全だ。大学の自治の観点でいえば、合議体のメンバーに誰を選ぶかは学内の評議員も参加したチェックが入る」

「ファンドで選ばれる大学は学部の規模を小さくして大学院の活動に特化し、学部教育をトップ研究大学以外の大学に譲るべきだ」

 

などなど…。

CSTIの議事録を私は読んでいませんが、このような話はすでにしていたのでしょうか…。

“【2022/05/04】「稼げる大学法案の廃案を求める大学横断ネットワーク」最新情報” への1件の返信

  1. 以下、河先生の追加情報です。こちらもご参考下さい。

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    ◆現代ビジネスオンラインの川邊克明氏の記事です。
    (前編)いま「経済安全保障」が、驚くほど「バブル化」している理由
    https://gendai.ismedia.jp/articles/-/95001?imp=0
    (後編)岸田政権が進める「経済安全保障」、その「危うさ」を考える監視社会に繋がらないか
    https://gendai.ismedia.jp/articles/-/95003?imp=0

    (後編)から科学研究に関わる部分を何カ所か抜き書きし、強調表示します。

    「先端科学・技術を振興し、他国の追随を許さない産業分野を開拓し、政治的にも国際社会での優位性を打ち立てるというものだ。アカデミズムから民間企業まで、研究機関などを動員した国家システムの構築に主眼を置く。
    しかしそれは、「軍産」とか「産学」とか、とかく批判を浴びてきたスキームに直結するものではなく、2004年の国立大学の独立法人化に続き、甘利氏が展開してきた大学資源や知的インフラの活用、大学ファンドなどによる付加価値を創造する「知識産業体」へのイノベーション構想をイメージしているようだ。

    戦前、商工省の岸信介、椎名悦三郎ら「革新官僚」は、軍部と一線を画し、官民一体となって、中央集権的な指令型の経済計画を市場型に転換し、計画的な自由経済の創出という「満州国」モデルを打ち立てた。戦略的不可欠性には、そうしたモデルを彷彿とさせるものがあるが、岸氏らの成功体験も、本土帰国後は、図らずも軍部や翼賛政治家らによって軍国主義が貫徹した「国家総動員」体制へ組み込まれていった。

    それだけに、政・官の、民への関与・統制は、研究を単なる軍事研究に転用するために動員システムに変質するおそれがある。現在の経済界の「寡黙な抵抗」も当然の成り行きと言えるだろう。」

    「「学問の自由」や「大学の自治」の名の下に、戦後一貫して聖域化されてきた「アカデミア」に警察が公然と足を踏み入れることも容易になりそうだ。その意味では、政府方針に異を唱える人文・社会科学系学者6人の会員任命が拒否された、安倍・菅内閣以来漂流を続けている「日本学術会議問題」は、その助走に過ぎなかったのかもしれない。」

    ◆経済安保法案は米中覇権争いに経済・研究も使うもの「大学人と日本共産党のつどい」 田村副委員長の訴え(しんぶん赤旗、2022.5.4)

    https://www.jcp.or.jp/akahata/aik22/2022-05-04/2022050404_06_0.html
     参議院内閣府委員会で経済安保法案について問い質してきた田村氏が、「大学人と日本共産党のつどい」で話した内容をまとめた記事で、発言全体は、下記動画で確認できます。記事では省略されていますが、「稼げる大学」法案にも言及しています。

    https://youtu.be/qrKWZL8bjok(開始7分後~約10分間)

     記事の最後の部分で次のようにあります。

    「同時に、自民党や日本維新の会の質問を聞いて思い浮かべていることが、安保法制を強行する安倍政権に対して、研究者、学者、大学人の中から「反知性」だと喝破するたたかいが起こったことです。日本学術会議会員任命拒否に、学会・学会長に「任命せよ」の声が広がったことです。今のウクライナ侵略戦争に対しても国連憲章違反、国際人道法違反の立場で抗議の声をあげる。」

     こうした「知性の声」と連帯したいという文脈ですが、残念ながら、日本学術会議会員任命拒否問題が起きたときの「盛り上がり」を考えれば、この破壊的法案に対する反応はあまりになさ過ぎると田村氏の言葉を聞いて改めて思いました(自戒も込めて)。

     なお、共産党だけでなく、社民党も頑張って反対しています。4月19日の内閣委員会での福島瑞穂議員の質疑はほとんど学問の自由の問題にあてられています。以下の動画で20分程度にまとめられています。

    https://youtu.be/1dYihSKteOc

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